前癌病変・白板症
前癌病変とは?
均一型の口蓋白板症 | 不均一型の舌白板症 |
通常の状態から、細胞が変化して、癌化(悪性化)していくなかで、その、口腔内の粘膜部の「正常部に比べて、より癌が発生しやすい形態的変化を来たした組織」を前癌病変と呼びます。
この、前癌病変の状態で、歯科、あるいは口腔外科を受診されれば、癌の早期発見につながります。
◇前癌病変から扁平上皮癌の病理
上図は口腔内の粘膜の図(Dental Diamond 2009 7月号、 実践歯学ライブラリーより引用)です。
口腔内の粘膜は表面の上皮層と上皮下結合組織からなっています。
左の図は単に上皮が厚くなった“上皮過形成”、そして、上皮の厚み、表面の凹凸が大きくなり“軽度異形成”と言われる状態までを表しています。
右の図は、上皮の異形成の程度がさらに中等度、高度になっていく様子を表しています。
“高度異形成”の状態で、上皮から、さらに組織の深い部分の結合織まで、異形成細胞が浸潤するようになると
“早期浸潤癌”と診断されます。
◇主な前癌病変
●白板症
白板症は喫煙、飲酒、カンジダ症、鉄欠乏性貧血などが原因とされています。
鑑別すべき病変は扁平苔癬(へんぺいたいせん)、カンジダ症、白色浮腫など、多岐にわたっています。
癌化率は病変の部位によって差があり、舌や口底(舌の下部)が他の部位に比べて高率です。
治療法は、基本的にはすべて切除の対象となりますが、軽度異形成は何らかの刺激に対する反応性病変の可能性もあるので、患者さんと十分相談のうえで経過観察という場合もあります。
●紅板症
口蓋の紅板症 | 舌の紅板症 |
紅板症は白板症より、稀な病変で、高い癌化率を示します。
●白板症の癌化例
初診時の舌白板症 | 白板症切除後4年2か月での癌化病変 |
前癌病変の対処法は基本的に切除術が選択されます。
経過観察中に悪性化の兆候が見られたら素早く切除します。
しかし、切除しても、比較的高頻度に再発がみられるため、厳重な経過観察をしてもらってください。