美しさを保つために

口は消化器官の入り口であり、咀嚼、会話に大切であるばかりでなく、愛情を表現し、人間の喜び、悲しみ、怒り、幸せをあらわすところです。口腔の健康を守ることは、からだの健康を維持、増進させることであり、よく噛めることはさまざまな病気の予防にもつながります。

女性の生涯を通して適切で十分な口腔ケアをすることは、生命の質、生活の質(QOL)にとって重要なことで、それは美しさを保つことでもあるのです。

「蓮(陽山紅蓮)」(上野不忍池)

「蓮(陽山紅蓮)」(上野不忍池)

 1.口腔ケアの基本は、プラークコントロール(バイオフィルムの機械的除去)です。

むし歯も歯周病もプラーク(バイオフィルム)による感染症です。したがって毎日の歯ブラシやフロス、歯間ブラシによる清掃と歯科クリニックでの定期的なクリーニングによってプラークを機械的に取り除き、口の中の環境を整えることが。口腔ケアの基本となるのです。

バイオフィルムについてはこちら

2.バランスのとれた食事を楽しい雰囲気でよく噛んで食べましょう。

日本人にとくに不足しがちなカルシウムを含む食物を意識して摂取しましょう。甘い食物は食後にデザートとして適切な量を食べるなど、食べ方を工夫してください。

3.女性の生涯には、病気の感受性の高くなる時期があることを理解しましょう。

女性は、生涯を通して男性よりも性ホルモンの影響を大きく受けます。
節目に時期(初潮、妊娠期、更年期など)には、とくに注意をしてください。

4.むし歯や歯周病に自分がどれだけかかりやすいか(リスク)を知りましょう。

むし歯も歯周病も、個人によってかかりやすさに差があります。
ご自分のリスク(危険因子)をよく把握し、適切に対処しましょう。(位相差顕微鏡など)

5.「歯ぎしり」と「くいしばり」に注意しましょう。

[歯ぎしりと食いしばり]は、ご本人が自覚しないで起こっている習癖です。
歯ぎしりや食いしばりをしている徴候に気づいたら、回避するように心がけてください。

歯ぎしり・食いしばりについてはこちら 

6.固いものをよく噛んで食べることは歯の健康のために良いことです

ですが、歯の神経を取っている歯が多い人は、歯の根の破折に注意しましょう。歯の神経はできるだけ取らないで済めば、それに越したことはないですが、やむを得ず抜髄(神経を取ること)、根管治療がされた歯は、残念ですがその寿命は短くなってしまいます。
自分の歯をできるだけ長く使うために、固いものを噛むときは歯を破折させないように、ゆっくりほどほどで噛んでください。

7.タバコは毒の缶詰です。

タバコを吸っている方は、ぜひ禁煙しましょう。タバコは多くの病気の発症と進行に関わっています。

とくに歯周病にとってタバコは最大の危険因子です。
肺がん、口腔・咽頭がん、喉頭がん、食道がんのリスクは非喫煙者の何倍にもなります。

タバコと歯周病の関係についてくわしくはこちら

8.骨粗鬆症予防のために、無理なダイエットはやめましょう。

女性に多い骨粗鬆症を予防するため、若い時期から骨の密度の増強・維持に心がけましょう。
定期的に適度な有酸素運動を行うことが効果的です。
無理なダイエットはしないようにしましょう。

9.フッ素入り歯磨剤やキシリトールガムなどを利用しましょう。

フッ化物入りの歯磨剤やフッ化物製剤は、むし歯のリスクの高い患者さんが利用する、とくに効果的です。
また、中高年になると歯肉が下がって歯根が露出してきますが、この部分はむし歯になりやすいので、フッ化物入りの歯磨剤をぜひ使ってください。

10.自分が服用している薬剤について、十分な知識をもちましょう。

中高年になると生活習慣病で通院し、多くの薬剤を服用している人が増えます。

薬剤には、唾液の分泌を低下させたり(ドライマウス)、歯肉を増殖をもたらしたりなど、口の中にさまざまな副作用を及ぼすものがたくさんありますので、ご自分の飲まれている薬の性質(とくにその副作用)をよく知ることが大切です。

ドライマウスについては こちら

11.ご高齢の方の誤嚥性肺炎に注意しましょう。

要介護者やご高齢の方の死因で最も多いのが老人性肺炎です。

その原因菌は口の中に存在し、寝ている間の誤嚥によって呼吸器に入りますので、ご高齢の方では、就寝前の口の清掃がとくに重要です。

12.信頼できるかかりつけ歯科医院を決め、定期的にメインテナンスを受けましょう。

自分の歯にまさるものはありません。
そのためには、日常の手入れと歯科クリニックでの定期的なメインテナンスが大切です。
これからの時代は病気になってから通院するのではなく、予防が中心になっていくとおもわれます。
したがって健康の維持・増進のため普段から定期的に、歯科クリニックをご利用ください。