心臓病と歯周病
歯周病菌の特殊性
歯周病菌は、お口の中に通常存在する、“常在菌”とは違った環境をつくり、特別室のようなところで、生き延びています。
そして、深い歯周ポケットから、または、除菌しないで行う歯石除去などで血管の中に入り、体のさまざまな臓器にたどりつき、そこに定着します。
心臓はその代表的なもので、心臓の心室と心房を分けている弁に定着し、細菌性心内膜炎を起こすことが知られています。
歯周病菌による感染性心内膜炎
感染性心内膜炎は、心臓の内側を覆う膜に起こる感染性の炎症で、同時に心臓の弁や心筋も障害が起こります。
原因の多くは細菌で、血流中から侵入して心臓の弁にとどまり、心内膜に感染します。
心房が血液で充満され、心房が収縮し、血液が心室に流れるのにわずかな時間差があり、それが細菌が心内膜や弁に付着するチャンスを与えてしまうとも、考えられます。
さらに、奇形や傷ついた心臓弁は、正常な心臓弁より、感染症にかかりやすくなります。
このような弁に感染した細菌はほぼすべて「亜急性細菌性心内膜炎」を起こします。
小児期にかかったリウマチ熱(リウマチ性心疾患)による心臓障害も危険因子です。
(歯周病の本当に怖いわけ 宮田 隆著より一部引用)
したがって、心臓疾患をお持ちの方は歯科治療を受ける際には必ず担当歯科医師に申し出てください。
歯を抜いたり、外科処置の前にはもちろん、歯石除去の場合にも、術前に抗生剤を飲まなくては危険です。
病巣感染とは?
体の一部に感染源を持っていて、そこの細菌が血液中を通って、遠隔臓器に移動し、そこに新たな感染を起こすことを“病巣感染”といいます。
このような、病巣感染の95%が歯、歯肉と扁桃から発生することを1912年フランク・ビリンク博士(米)は発見しました。
さらに、ウェストン・プライス博士(米)は1923年、(神経が死んだ)歯の内部の象牙質に侵入した細菌は、血液中に入り、全身に移動し、心臓、腎臓、関節、神経系、脳よ眼にも感染し、さらに、妊婦にも危険を及ぼす可能性があると発表しました。
従来、病巣感染は口蓋扁桃による、腎炎、関節炎、掌蹠膿疱症などが知られていましたが、歯、歯肉も病巣感染の原発巣なのです。
したがって、抵抗力のある人の場合はほとんど問題はありませんが、精神的ストレス、疲労、不規則な生活習慣などで、免疫力が低下している場合、リウマチや関節炎や心臓病に歯性病巣感染によって罹ってしまう場合も考えられます。
ですから、重度の歯周病、むし歯を放置しておくことは、“命取りになる!”と言っても、大げさではないのです。
“重度の歯周病、う蝕に罹患した歯でも、何が何でも残して治療する!”というのには“落とし穴”があるのです。