歯周病Q&A
歯肉増殖を起こす薬剤にはどのようなものがありますか?
薬物の内服により、歯肉増殖を起こすことがあります。(薬物性歯肉増殖症)
- フェ二トイ(アレビチン、ヒダントロール)
てんかんの発作を止める、抗てんかん薬です。中止することが難しいので、プラークコントロールを入念に行い、(お口の中を丁寧な歯みがきなどで、清潔な状態にする)極力炎症を抑える努力が第一です。 そうすれば、増殖はだいぶ抑えられます。 - 二フェジピン(アダラート、セミパットなど)
カルシウム拮抗薬で、血管拡張作用があり、高血圧症、狭心症に対して広く用いられています。歯肉増殖が見られた場合、他の薬に代えてもらえるよう、主治医と相談しています。 - シクロスポリン(サンディミュン)
免疫抑制薬です。フェ二トイン、二フェジピンと同じく、プラークコントロールを徹底させることで、局所の炎症を減少させることが望まれます。
上手な歯みがきの方法を教えてください
上手な歯みがきの方法は、歯の本数、歯並び、歯ぐきの状態、歯周病の進行度、年齢などによって、それぞれ違いますが、以下のように注意してみがいてください。
- 歯と歯ぐきの境目と、歯と歯の間を中心にみがく。
- 歯ブラシは歯に対して斜めに(45度くらいの角度)で当てる。
- なるべく、1本1本ていねいにみがくようにする。
- あまり強くこすりすぎない。(いつも歯ブラシがあたっているところは、歯や歯ぐきが削れてきます)
- 大きく横みがきをするのではなく、細かく振動させるようにする。
- 歯みがき剤をいっぱいつけすぎない。(歯ブラシの先端の幅の約三分の一程度がいいです)
- デンタルフロス、歯間ブラシなどの補助器具を併用する。(個人差はありますが、30歳代くらいから、歯ぐきは減ってきますので、歯間ブラシが必要になってきます)
- 歯間ブラシ、デンタルフロスはあまり強く、こすらないようにする。(とくに歯間ブラシは強くこすりすぎると、歯ぐきはますます減ってきます。サイズも大きすぎないものを使用してください)
- 1日の中で、夜寝る前の歯みがきが一番重要です。
- みがき方はある程度個性があってもいいと思います。ただ、歯科衛生士に一度はみがき方をみてもらって、アドバイスを受けられると、効率的で、歯や、歯ぐきにやさしいその方に合ったみがき方を教えてくれると思います。
胃の病気(ピロリ菌感染)と歯周病との関係は?
胃潰瘍などの胃腸粘膜疾患を引き起こすことで知られるピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、口腔内にも存在することがわかっています。歯周病が進行すると、ピロリ菌の検出率も高くなり、ピロリ菌が炎症を増悪させることが示唆されています。
胃潰瘍などの病気を予防するためにも定期的に歯科うを受診し、専門的な口腔ケアを受けるようにしましょう。
腎炎と歯周病との関係は?
歯周病菌が腎臓に感染することもあります。
急性腎炎症候群(血液をろ過するために働く腎臓の糸球体に障害がおこる病気)の人は歯槽骨(歯を支える骨)の吸収(骨が溶けること)が進みやすく、歯周病が悪化しやすいことが知られています。
歯周病は薬だけで治りますか?
たしかに、ペリオバスターNの使用とジスロマックの服用により、細菌数は激減し、症状は改善します。
しかし、やはり、基本は正しいブラッシングと、無理のない、生活習慣なので、これらを、きちんとしないとまた、歯周病が再発します。
さらに、感染症なので、原因を考え、これに対しても対策をとらないと、いくら、投薬しても、意味がなくなってしまいます。
そして、タバコを吸う方は禁煙をしたりとか、ある程度の努力をしませんと、歯周病は治りにくい病気なので、治るかどうかは、薬よりも、結局、患者さんの取り組み方次第ということになります。
また、実際の治療では、ペリオバスターNでよく、歯磨きをしていただければ、当クリニックではほぼ、90パーセント以上の方がジスロマックを使用しないで、十分症状は改善しております。
歯を残すか、抜くかの基準について
状況により、それぞれ違いますので、一概に言うのは難しいですが、歯がグラグラして物が噛めない場合で、そしてレントゲンを撮って支える周囲の骨が極端に少なくなり、歯と骨をつないでいる、歯根膜という組織がダメになっているという状況では、残すのは難しいと言えます。
歯はできるだけ残したいものですが、残すのが難しければ、抜いて、入れ歯を入れるなど、重度の歯周病で、周りの歯に悪影響を与えるおそれがある場合は早めに処置をして噛みあわせの状態も改善し、歯周病の進行も止めなければなりません。
実際、残すのが難しい歯の場合、患者さんのご希望で、処置をしても、短期間でダメになるか、かえって、周りの組織を悪化させてしまうので、そのまま、様子をみていただいて、ご本人が抜く決心がついた時点で抜くということもあります。
とにかく、本当に残せない状況になるまでに、噛むと痛いとか、しみるなどの悪くなる前兆はありますので、早めに受診されてください。
歯周病と心臓血管疾患との関係について
歯周炎のある人は、ない人と比べて、2.1~3.4倍も心筋梗塞などの心臓血管疾患を発症するリスクが高いことが報告されています。
また、歯周炎が重篤であればあるほど、その発症リスクが高くなります。
これは、歯周組織の炎症で産生されたサイトカインが血流を介して心臓血管にも波及するためと考えられており、現在このメカニズムを解明すべく、多くの施設で研究が進められています。
歯周病と糖尿病との関係について
糖尿病にかかっている人はそうでない人と比べて、 重度の歯周病になるリスクが3倍も高いといわれています。
また、歯周病菌やその毒素などが血管から体に入ると、インスリンが働きにくい体の状態を高めて、糖尿病を悪化させる可能性があります。
糖尿病患者が歯周病を治療すると血糖値が下がったという報告もあるほどです。
積極的な歯周病予防を心がけましょう。
歯のクリーニングは1日で終わりますか?
お口の状態にもよりますが、一般的には難しいです。
まず、初日はポケット測定、歯の動揺度などの簡単な検査、および生活指導、次回に顕微鏡検査ならびに治療計画、さらにその次から実際のクリーニングというのが通常です。
さらに、最新の歯周病治療のページにも書いてある通り、質の悪い細菌、カビなどが多い状態で、いきなり、出血を伴う歯石除去はリスクがあります。
また、現在の健康保険も1回の治療で全顎のスケーリングを請求して、終了するのは難しいという考えです。
したがって、なるべく、ご都合に合わせますが、治療回数は少なくとも、お口の状態の良い方の場合でも3回以上はかかります。
口内炎について教えてください
口内炎は体質により、(胃腸の弱い方など、)できやすいようです。また、体調不良時、ビタミン不足なども原因になります。
したがって、バランスのとれた食事、市販されているビタミン剤をとり、体も休めるようにしましょう。一般によく処方される、デキサルチン軟膏はステロイドが入っているので、なるべく長期的に使用しないようにしましょう。
当クリニックでは、クローブオイルまたは、フッ化ジアンミン銀などにより、傷の表面を固めて、痛みをとるようにしています。
なお、長期的に治らない口内炎(1か月以上)は腫瘍などの疑いもあるので、専門医に診てもらったほうがいいでしょう。
歯間ブラシについて
歯間ブラシは、歯と歯の間をみがく、有効な道具です。
歯と歯の間に食べ物がはさまったままにしておくと、歯周病、虫歯の原因になるだけでなく、歯列矯正で歯を移動するように、歯がはさまった食べ物によって動かされ、ますます物がはさまりやすくなってしまいます。
したがって、食べ物がはさまりやすい方は、1日1回は少なくとも使用するようにしてください。
使用方法は、さっと1、2回通すだけでいいです。通常の歯ブラシのように、こすると、歯ぐきが退縮して、ますます、はさまりやすくなりので、注意してください。
サイズはL、M、S、SS、SSS、などがありますが、あまり大きすぎてもよくないです。
歯が長く見えるようになる理由
歯周病になると、歯を支える骨がとけて、それにしたがって、骨についている歯ぐきも痩せてきます。
また、二十歳代をピークにして、齢をとるごとに骨も少なくなってきます。さらに、日本人はほっぺた側の歯ぐきは、薄い人が多いといわれています。
したがって、歯ぐきはだんだん痩せていく傾向にあり、相対的に歯のもともとの歯ぐきが覆っていた部分がなくなり、根の部分が見えてきて、長くなっていくのです。
根の部分が露出してくると、知覚過敏を起こすだけでなく、虫歯にもなりやすいです。
原因としては歯周病、年齢のほかに、くいしばりにより、エナメル質がはがれてきている場合も多いです。
さらに、いつも習慣的に横向きまたは、うつぶせで寝ていると、頭の重みが歯ぐきにかかってきて、歯ぐきがますます、やせてくることもあります。
歯がしみますがどうしてですか?
歯がしみるのは、歯の中の神経が知覚過敏をおこしているからです。理由としては次のようなことが考えられます。
- 歯周病で歯茎に炎症が起こり、歯を刺激している。
- くいしばりにより、歯がダメ―ジを受けた。(この場合、歯の根元がすり減っていることが多いです)
- 虫歯により、歯の神経が刺激されている。
- 磨き残しのプラーク(歯垢)の中にいる細菌、細菌の出す毒素の刺激を受けた。
- 体調不良、体力の低下。(疲れが残っている場合は歯もしみます。
- 過度のブラッシング。(力、方法など)
治療、対処法としましては、これらの中の原因をつきとめ、対処することです。原因はひとつではないことが多いです。
これらの他によく、あることで、神経の生きている歯に詰め物、被せ物をした時にも、しみる場合がありますが、(人によっても、その歯によっても違いますが)一般的に1週間程度で楽になることが多いです。
なお、神経の死んでいる歯もしみることがありますが、この場合、歯周病の進行で、歯と歯茎との間にある、歯周ポケットが深くなり、歯茎の中の神経が反応し、しみると考えられます。
歯周炎(歯槽膿漏)と歯肉炎の違い
歯肉炎は、歯茎に炎症が限局していて、歯が植わっている顎(あご)の骨まで、炎症が進行していない(骨が溶けていない)状態をいいます。治療をすれば、元の状態に戻る、比較的軽症の場合です。
症状的には、歯がしみる、歯みがきをすると出血する、などです。見た目的には、歯茎が赤くなり、いくらか腫れている状態です。
歯周炎は、歯が植わっている顎の骨まで、炎症が進行し、骨が溶けはじめている状態をいいます。治療をしても、溶けた部分の骨は完全に元の状態には戻りません。現在は再生療法もありますが、それには、いくつかの条件が必要です。したがって、病変の進行を止め、残っている骨の質を良くし、出来るだけ歯をもたせ、噛み合わせを維持していくという治療になります。
症状的には歯がしみるだけでなく、物を噛むと痛かったり、歯が揺れてきて、よく噛めない状態になります。見た目的には、歯と歯茎の間から、膿がでたり、歯茎もすぐに腫れたりします。口臭も強くなります。