子どもの矯正治療の始める時期
もくじ
はじめに
お子さんの矯正治療を始める時期は、歯科医の考え方によって、だいぶ差が出ています。
以前は、矯正治療は永久歯を抜くのが主流でしたので、小学校高学年以降の比較的遅い時期に始めているケースが多かったですが、最近は早期治療が支持されてきています。
よく、歯並び相談で、「様子をみましょう」と歯科医師に言われてしまうことがありますが、様子を見ていれば、歯の重なりは重症化し、歯並びだけでなく、お顔のかたちまで影響が出はじめてしまいます。
仮に“経過をみる”にしても、その時期、その時期で生活習慣、食生活の習慣、発音、嚥下の状態など取り組んでいくべき事はたくさんあります。
立川の小児矯正歯科、近藤歯科クリニックでは、子どもの歯並びが重症化する前の、早期の来院を願っています。 では、“早期の来院”とはいつでしょうか?
子どもの矯正治療の始める時期
ズバリ、“歯を動かす”という矯正治療の適齢期は7,8歳、小学校低学年です。
子どもの矯正は、以前は永久歯を抜く矯正治療が一般的であったため、小学校の高学年から始めるのが常識でした。矯正治療で抜いてしまう、第一小臼歯が生えるのが、小学校高学年だからです。
せっかく生えてきた永久歯、生えたての永久歯を抜いて!矯正治療を始めるのです。
しかし、現在では、矯正治療の考え方も多様化し、さらに、お子さま方の成長発育も変化し、さらに、呼吸、嚥下、咀嚼機能の低下により、早期の治療が必要になっているといえます。
さらに、矯正治療は、実際に“歯を動かす”だけでは治りません。
歯並びは、舌や唇の状態だけでなく、咀嚼筋、嚥下、呼吸に関係する筋肉、さらには生活習慣、食生活の“結果”でもあります。
とくに、近年、お子さま方の(成人もですが)咀嚼、嚥下機能が低下し、鼻づまり、アレルギーによる口呼吸が多くなっています。
仮に、“歯並び”を修正しようとしても、機能が伴わなくては治りません。ということは出来るだけ早期、永久歯が生える前の幼児期、いや、もっと前、赤ちゃんの時期、さらに、お母さんが妊娠したとき!
・・・・・・立川の近藤歯科クリニックでは、妊婦健診にいらした患者さんからお子様のむし歯予防、歯並びの話をしています。
話を戻しまして、一般的な“歯を動かす矯正”の開始時期は7,8歳、小学校低学年、というところに戻ります。(妊娠期、幼児期のお子様の歯並びに関する話は後述します)
子どもの矯正治療を早期に始めるメリット
1.永久歯を抜かなくても矯正治療が可能になるケースが多くなる
一生ものの大切な永久歯に関しましては、当クリニックでは原則抜かないで矯正治療を行ないます。
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2.状態が悪くなる前に対処できる。(重症化させない)
- 状態が軽いうちは、前歯の重なりの修正だけですが、小学校高学年(10歳前後)で犬歯が生えてきてしまうと、矯正治療の費用と手間がかかります。(ちなみに当クリニックでは、犬歯が生える前と後では、10万円前後違ってきます)
さらに、上の前の出っ歯や下顎が出てくる受け口は、歯並びの問題ではなくなり、お顔の問題になってきてしまいます。(これも後述します)
3.生活習慣、食生活なども修正できる可能性がある
生活習慣、食生活の修正は早ければ早いほどいいに決まっていますが、これによってお子様の顎の成長の程度ならびに方向も変わってきます。咀嚼、嚥下、舌の運動は授乳期から見ていかなくてはなりません。
4.過剰歯、欠損歯など、先天的なものを発見できる
先天性欠損は小学校の1クラスに1~2人の割合でみられるようです。とくに多いのが下顎の第二小臼歯、その次に上顎の側切歯です。過剰歯(よけいにある歯)もよく見られ、上顎の真ん中にある場合があります。
また、上顎の犬歯も変なところから生えてくる(もともと生える前に骨の中に潜っている位置が悪いか、生えてくる方向が悪い)ことがあります。
さらに、最後に生えてくる下顎の一番奥の歯、第二大臼歯がちゃんと生えるスペースがあるかどうかもチェックしなくてはなりません。
5.比較的早く、矯正治療を終わらせることができる
従来、矯正治療では、第一期治療と第二期治療と分けられていました。しかし、この場合、費用もかさみ、手間もかかり、第二期の矯正終了時期は高校生くらいになってしまうこともあります。
当クリニックでは、お子さんと親御さんのご負担を減らすため、出来るだけ早期に始め、成長発育も少しでも変えることができれば、少しでも早期に終わらせるように(早いお子さんは小学生で終わります)、と取り組んでおります。
6.お子様の負担が少ない
当クリニックでは、奥歯の生えるのが遅くなり、中学生に治療が継続しているお子様方には、学校で少しでもしゃべりやすいように、上顎の装置は学校に行っているときは外して、家だけでいいと指導しています。
機能トレーニングも、生活の中で無理なくやれるように、お子さま、お母さまと一緒に考えています。
7.お子さんの自我形成の前で親のいいつけを素直に聞いてくれる
お子様の反抗期は小学校5,6年に始まることが多いですが、それまでに、出来るだけやれることをやっておく、というのも大事なことです。さらに、5,6年では受験、習い事、中学生では、塾、クラブ活動などで忙しくなってしまうので、その前の時期をのがさないことです。
8.咀嚼、嚥下機能、さらには滑舌が良くなる
最近の傾向として、歯並びの悪化に伴い、口腔の機能の低下も目立ちます。(実際は機能が良くないので、歯並び、噛み合わせが悪くなったのです)
たとえば、上顎の歯列を少し広げるだけで、噛みやすくなり、舌も動かしやすくなり、呼吸もしやすくなることもあります。
早期に行えば、成長発育の方向もより良い方向に変えていけると考えられます。
子どもの矯正治療を従来は遅く始めた理由
従来の矯正治療の考え方は、歯並び、噛み合わせはご両親の遺伝でほぼ決まり、その遺伝的傾向は変えられない。そして、その成長発育の程度も予測がつきにくいため、矯正治療をしても、歯科医師側にとって予測を立てにくい、というものでした。
さらに、歯を並べるために最も確実なのは“永久歯を抜いてスペースをつくる”ことであり、その抜くべき永久歯の生えてくる時期から、まず、永久歯を抜いて、矯正治療始めていく、という考えもありました。
小学校低学年のお子さんの歯並び、噛み合わせを、実際に小学校の歯科健診で診てみると、まだその時期は“遺伝的傾向”よりも、“環境的傾向”が強くでていることに気づかされました。
ということは、その“環境的原因”に取り組み、変えていくことにより、“遺伝的傾向”を少しでも少なくできるのではないか?さらに、小学校低学年の歯の重なりは、まだ軽症であり、早期に取り組むことは、早期治療ということで、お子様のご負担も少なくなるのではないか?
そして、小学校時代はその人の生活習慣の基本となる時期であり、その良い歯並びになっていくための良い生活習慣づくりが、歯並びだけでなく、歯の健康、身体の健全な成長発育につながっていくのではないか。
「ただ、黙って様子を見ているよりは、今、出来ることをしていきたい!」
これが当クリニックの矯正治療の考え方です。
詳しくはこちらへ ⇒近藤歯科クリニックの小児矯正について
当クリニックで行う小児矯正の取り組み
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出産前
妊婦健診時に、簡単に説明と歯並び(お口の機能)に関するアドバイスを健診と別に時間をとって行っています。(3千円~5千円、時間によって変動します)内容は、授乳法、哺乳瓶の選択、椅子の選択、離乳食の与え方、などになります。
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幼児期
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- 歯科医院に慣れるように、むし歯の場合も無理に歯を削ったりして怖がらせないようにしています。
- 歯の萌出状況に合わせたアドバイス
- 歯並び、噛み合わせについての説明、今後の予測
- 歯並びを良くしていくためのポイント
- 歯みがきについて
- 指しゃぶりに対しての年齢別対処法
- 受け口に対しての対処法
- 食べ物の噛み方
- 咀嚼、嚥下機能の診断
- 舌のトレーニング(マウスピースを使用した)
小学校入学前後
この時期から機能トレーニングが可能になってきます。実際に歯を動かす矯正治療に入る前にこの準備期間が重要です。
- 永久歯の生え変わりのアドバイス
- 今後の歯並び、噛み合わせの傾向の予測
- 前歯の噛み合わせ治療
- 低位舌の治療、舌のトレーニング
- 受け口の治療
- 先天性欠損歯、過剰歯の診断
- 咀嚼、嚥下のトレーニング
- 食事、噛み方アドバイス
- 永久歯のむし歯予防
このように、お母さんのお腹のなかにいる時から、その時期、お子様の性格に応じて、出来る事、必要なことをしていくことが重要です。そうすれば、矯正治療をしなくてもすむかもしれないですし、治療を行ったとしても軽度で費用も安く済むことになります。
小学校高学年になって、矯正相談で来院されるお子さま方は、実際に歯を矯正治療で動かしながら、並行して機能トレーニングを行います。
歯並びの問題⇒お顔の問題
お子さまの悪い歯並び、噛み合わせを放っておくと、お顔にも影響が・・
小学校入学後、前歯が永久歯に生え変わると、お子様の歯並び、噛み合わせの傾向がはっきりとしてきます。たとえば、“出っ歯ぎみ”“受け口”など。そして、このまま放置していますと、前歯の生え変わりの状態が基準になって、どんどん生え変わりが進みます。
たとえば、服をきるとき、最初のボタンをかけ間違えてしまうと、そのずれはずっと続くような感じです。そしてどんどん重症化して、奥歯の噛み合わせもずれてしまいます。
そもそも、最初の前歯の噛み合わせが違ってしまう(受け口、出っ歯など)原因は噛み方、飲み込み方、呼吸、姿勢、生活習慣などに問題があるからですが、その間違った機能、習慣に合わせてあごは成長してしまうのです。
やがて小学校高学年になると背がグーンと伸びる時期(男の子は5年後半~)(女の子は4年生後半~)になると、さらにその間違った方向に成長が加速されます。
たとえば、出っ歯の子はさらにひどい出っ歯に、受け口の子はあごが下に伸びてきて、“タテに長い顔”になってしまいます。こうなると、たとえ歯並びを歯を抜いて修正したとしても、顔の輪郭は治りません。歯並びの問題が、お顔の問題になってしまったのです。
さらに、この背が伸びる時期にご両親の遺伝的傾向も強くなってきますので、御両親いずれかが受け口の場合、重症化しやすいのです。
従来の矯正治療で第一期治療と第二期治療が分かれているのは、お子様の小学校高学年の変化に対応していくためだと思いますが、できれば、やはり早期に対応して、どこまで可能か予測はつきにくいですが、出来る限りのことはしていきたい、というのが親心というものだと思います。
ちなみに、従来の矯正治療の流れとしましては、重度の出っ歯、また受け口のお子さんは成長期が終了しての“あごの骨を切る手術”を最終的にすすめられていました。
一口に“あごの骨を切る”といいましても、なかなか、お子さんにとっても親御さんにとってもインパクトがありますよね。であればなおさら早期に出来ることをしていく、というのが良いのではないでしょうか。
まとめ
子どもの矯正治療を始める時期は、歯科医師の考え方によってだいぶ差があります。当クリニックでは、早期治療をお勧めしています。
小児矯正治療が、単に歯並びだけの問題にとどまらず、健全な成長発育をめざして、良い生活習慣、食生活を身に着けていただくきっかけとなっていただければ、私たち、当クリニックとしても、スタッフ一同この上ない幸せであります。